さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


ローガンの熱狂が尾を引く会場の中──

ステージ上に、一歩、榛名千歳が歩み出た。


すると案の定、先程までの熱狂モードとは打って変わった激しいブーイングが始まる。


「Get lost! You’re a disgrace to watch!(失せろ!見てるだけで恥ずかしい!)」

「Looking like a bottom and still talking sh*t about gay people?!(『受け』っぽい見た目してるくせに、ゲイ差別とかマジかよ?!)」


……はは、なかなかに問題ある表現が飛び交ってるな。一体全体どんなデマが流されたんだか。後々訂正するのが面倒そうだ……。

呆れてしまいつつ、少しだけ心配になって榛名千歳に視線を投げる。

瞬間──


呼吸が止まった。


あまりにも、静かな表情。

緊張も動揺も、一切見えない。

その瞳は、まるで凪いだ湖面のように冷たく静かで、 鼓膜を破るような観客のブーイングさえ、どこか遠くに聞こえているような顔だった。


そして、ほんの一瞬だけ、視線を観客席の方へと向け──

ゆっくりと、目を閉じた。  



──ああ、これは。



完全に、『入ってる』。