……やはり。
きっと睦の中で、榛名千歳という存在は『情に流されやすい』『付け焼き刃の技術で上手く繕っているだけの凡才』程度の評価なのだろう。
──本質を、何も見ていない。
「榛名千歳は、俺が今まで見てきた中でもかなり極端な『計算型』のパフォーマーだ。周囲からのアドバイスを、データのように的確に処理して確実に改善していく。 本番で、自分の実力以上のものは出せない──が、その実力『以下』のものも、決して出さない」
「……何が言いたい?」
低く、押し殺したような声音。
けれど、その目の奥に浮かぶ焦燥感が、俺にははっきりと見えた。
──ああ、睦。
察してしまったくせに、認めたくないんだな?
だったら、ハッキリと言ってやる。
「つまり──環境がどうであろうが、彼の中にプログラムされた『技術』は決して揺るがない。だから栄輔に通用した揺さぶりは、千歳には効かないってことだよ」
心を軸にする栄輔。
脳を軸にする千歳。
一見すれば、栄輔のパフォーマンスの方が胸を打ち、鮮烈で、天才的に見えるだろう。
けれど、榛名千歳の中で今、ひたすら積み重ねられている『正確な反復』と『冷静な構築』もまた──
確実に、異常な才能なのだ。
そして。
かの伝説のアイドル、黒羽仙李も、同じタイプの才能の持ち主であった。
式町睦は、まだそのことに気がつけていない。
それも仕方ないだろう、榛名千歳はまだその『領域』に達していないのだから。
