──俺が千歳に思考を逸らしている中、気づけばローガン・ヒューズのステージは終わりに近づいていた。
高らかに決めのビートが鳴り、最後のポーズを取ったその瞬間。
会場はまるで火山の噴火のような歓声に包まれた。
叫び、立ち上がり、飛び跳ねる観客たち。
誰もが彼の勝利を確信し、誰もがそれを称賛していた。
と、そんな異常なまでの熱狂の渦中──
「……この熱狂に水を差すのは、心苦しいだろうな。榛名千歳も」
右隣から、睦の淡々とした呟きが落ちた。
彼は肘を肘掛けに預けたまま、興味があるのかないのか分からない目でステージを見つめていた。
もう結果は決まってしまった、とでも言わんばかりの余裕で。
「ローガンのパフォーマンスで満たされた観客たちに、もう一度ブーイングを強いるなんてナンセンスだ。棄権した方がいいんじゃないのか?」
そんな挑発的な文言に、俺はちょっと黙った後──短く応じる。
「……栄輔の時にブーイングが来たのは、素直に痛かった」
言いながら、隣に座った式町睦に視線をやる。
「冨上栄輔は、完全な『感覚型』パフォーマー。精神の安定が崩れた瞬間、全てが瓦解する。 その繊細さこそが彼の美点でもあり、最大の弱点でもある。
けれど──榛名千歳は、違う」
その言葉に、睦はわずかに眉を動かし、怪訝そうに首を傾げた。
