そして、こちらの驚愕を見透かしたかのように──
ふっ、と煽るように野生的に微笑む彼。
その魅惑的な表情管理に、最高潮だった会場がさらに盛り上がり、完全なるカオスに陥ってゆく。
「Oh my god…!(嘘だろ……!)」
「I’m not okay I’m not okay I’m NOT OKAY!!!!(無理無理無理無理!!)」
「Bro… I think I’m pregnant.(なぁ、俺妊娠したかも)」
最後の奴は言いすぎだろ……と内心冷笑していると、なんと本当に興奮しすぎて失神する観客まで現れて、スタッフが数人駆けつけて担ぎ出して行った。
おいおい……。
なんなんだこれは。
『Schadenfreude』のライブじゃあるまいし……。
と、呆気に取られている俺の横で、ルシがくすりと満足そうに片口角を上げた。
「He’s turned out rather well, hasn’t he?(なかなかよく育っただろう?)」
どこか恍惚としたような、まるで最高級の美術品でも見るような視線で、自身の傑作を眺めるルシ。
ムカつくから何も答えないでいたが、ルシはそんな俺の顔をわざわざ覗き込むように首を傾げ、視線を合わせてきた。
──さら……と流れるブロンドの奥、凍てついた琥珀のような、ゴールドの瞳が静かにこちらを捉えて。
相変わらずの凄まじい威圧感に、少々息を詰まらせる。
「Creating something beautiful, no matter the cost—that’s noblesse oblige.(たとえ何を失っても、美を創る。それが私に課されたノブレス・オブリージュさ)」
ノブレス・オブリージュ……ね。
この人は昔からこうして、自分に酔った美辞麗句を並べるのが好きだ。
……その高尚な信念の裏で、一体いくつの才能を潰してきたんだか。
まぁ、それがルシの正義だと言うのなら、こちらも敢えて踏み込まないけれど。
触らぬ神に祟りなし、だ。
それに、ルシがここまで得意になってしまうのも分かる。
だって──ここまで完璧に成熟し切ったステージを見せられて、『勝てる』だなんて思える人間はおそらく誰もいない。
もうLUCA側の勝利は確定したようなものなのだ。
