ステージに向かう途中なのだろう、イヤモニを片手に見下ろしてくる視線は至極冷静。
……さっきの情けない姿を、千歳くんにも見られたんだ。
そう思った途端、罪悪感と羞恥心とが同時に迫り上がってきて、思わずバッと視線を逸らしてしまう。
このひとの前では、弱いとこなんて絶対見せたくなかったのに。
お願いだから、それ以上こっちを見ないでほしい。
と、そんな俺の願いとは裏腹に──
千歳くんは俺の前にしゃがみ込んだ。
ふわ、と鼻腔を掠めるシャンプーみたいな淡くて甘い香り。
千歳くんは俺と視線を合わせるみたいに首を傾げて覗き込んでくると──
「お前、そんな下手クソだったっけ?」
容赦のない毒舌を、ど直球で投げてきた。
クリティカルに突き刺さったその言葉に、思わず「うっ」と小さくうめく。
えぐい、今あなたにそれを言われるのが一番効くんですって……。
「……死んだ方がいいっすよね……」
はは、と乾いた笑いと共に、力無く俯いてこぼす。
と、その瞬間──
千歳くんの手のひらが、俺の頭にぽん、と乗った。
不意に近くなった距離に、ビクッと全身が硬直する。
と、そんな俺を揶揄うみたいに、千歳くんは薄く微笑んで。
「……死ぬなら俺が負けてからな」
冗談混じりに、そんなことを言う。
その根底にある余裕に、どこか揺るがない強さみたいなものを感じて、息が止まった。
……なんか。
今日の千歳くん、ヤバい。
俺の一個上のはずなのに──
俺とは比べ物にならないくらい、飛び抜けて大人っぽくて、落ち着いてて、頼もしくて。
わけ分かんないくらい、カッコいい。
「早く戻んなよ。みんな心配してる」
ぐしゃ、とあやすみたいに俺の頭を撫でた千歳くんは、それだけ言い残すと、さっさとステージの方向へと歩いていってしまう。
