さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



無数の敵意から、とにかく遠くに逃げたくて──

ステージ裏、人目のつかないところに来て、ようやく立ち止まる。


その後しばらくはまだ、一体何が起こっていたのかよく理解できなくて。

ただ呆然と、息だけが荒かった。



けれど、そのうち──

自分のしでかしたことが、実感を持って、脳内に染み込んでくる。



負ける。

俺のせいで。



そう気がついたのと同時に、視界がブワッと滲んで。


堰を切ったように──

涙が溢れ始めた。


一度流れ出した嗚咽は止められず、喉の奥が苦しくて呼吸すらままならない。

心臓が、鋭利な刃物でザクザクに切り裂かれていくみたいに痛い。


全身が冷えて、でも頭だけは妙に熱くて、ぐらぐらする。


──どうしよう。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

なんで、こんなことになっちゃったんだ。



俺が、勝たなきゃいけなかったのに。

勝つって、あれだけ言ったのに。


まただ。

今回もまた──



俺のせいで、三人一緒にデビューできなくなる。



「っ……ぅ、……ぐ……」



喉の奥から上がってくるものを、必死で飲み込んだ。

吐きそうだ。


控えのテントに戻らなきゃいけないのに。


合わせる顔が──無い。


ステージ脇でうずくまって、震えながら泣き続けていた──

そのとき。



「──栄輔」



頭上から、静かな声が落ちた。


思わず顔を上げると、そこにいたのは──


千歳くん。