さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



頭が真っ白になったまま、スピーカーから流れ出す音だけを必死に追いかける。


何度も何度も、音程を外して。

足はもつれて、振り付けもぐちゃぐちゃ。


途中からは──

もう、自分が何をしているのかすら分からなくなって。


まるで、夢の中で全力疾走しようとしてもできない時みたいに。

焦燥感だけ先走り、身体は全く思うように動かないまま──



どれくらい、経ったのだろうか。



気がつけば──


音は、止まっていた。



ステージが、終わったのだ。



「…………あ」



音が止み、ブーイングだけがどこか遠くに聞こえる世界で。


胸を抉るように突き刺さしたのは──

『何もできなかった』という圧倒的な無力感。


呼吸が荒くて、喉が渇いて裂けてしまいそうに痛くて。


足が震えて、倒れそうになって。


ステージ上で醜態を晒す前に──

俺はガバッと勢いよくお辞儀をして、その場から走り去った。