さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……と、本人に言ったところで、おそらく伝わらないだろうし。

『千歳の本性を暴く』というミッションは既に日本での練習期間で大体達成されたので、合宿中の俺は、千歳との接触頻度は最低限に減らして、自然な距離で観察するだけにしている。


千歳に関しては、昨日の練習でだいぶ食らってたみたいだったし、今後ちょっとは大人しくなるんじゃないかな。

流石に言われすぎてちょっと可哀想だったし……今後は少しずつ優しく接するようにしていくか。



……で。

問題なのはそんなことより、この後のステージだ。


そろそろ、勝敗を決めると言っても過言ではないセカンドマッチ──

栄輔のパフォーマンスが始まる頃。


おそらく今舞台袖で待機しているであろう栄輔の心情を、考えてみる。


今、彼はどんな顔をしているんだろうか。

ちゃんと、いつも通りに自分の世界に入れているだろうか。


あいつは緊張しいだから、過度なプレッシャーに晒されるとパフォーマンスが弱くなる。変に気負ってないといいけれど……。


自分がステージに立つ時は全くと言っていいほど緊張しなかったのに、栄輔のことになると我ながら呆れるくらい心配してしまう。


──でも、きっと栄輔はやれるはずだ。

昔から、一番近くで彼の努力を見てきた。


どれだけ才能を妬まれて、攻撃されても決して折れることなく、大怪我でデビューを見送っても希望を捨てずにここまで這い上がってきた彼は、強い。


そして、何より──

俺と遥風とのデビューを今度こそ叶えるんだって、ずっと、ずっと願ってきたんだから。


その覚悟を見せられれば、絶対に勝てるはず。


と、そんなふうに自分に言い聞かせていた──

その時だった。


ステージ袖に、栄輔の姿が見えた。

思わず身を乗り出して、目をこらす。


硬くなった肩。ややこわばった足取り。

震えるような息を一つ整えて──彼はステージへと、一歩踏み出した。


と、その瞬間。



「Booooooooooooo!!!!」



あまりにも大きな、耳をつんざくようなブーイングが会場を震わせた。