その可能性に気がついた瞬間、頭の中が驚くほどスムーズに動き始めた。
感情がないなら、物語がないなら──
そんな機械的な存在が、感情を学習していく物語にすればいい。
魂が無いことを、否定しない。
むしろ、それを物語の『起点』として昇華すればいいんだ。
そして、そのストーリーに、驚くほどマッチする曲を、私は知っている。
それは、三次審査の時にフューチャリング参加した鷹城葵の楽曲──
『LOVE:CODE』
全編英詞の、近未来的なデジタルサウンド。
あの曲の歌詞とリンクするパフォーマンスが完璧にできたら、きっと、その完成度は今用意しているステージよりもはるかに高くなるはず。
相手チームのエースであるローガン相手に、ダンスを捨てるだなんてタブーかもしれないけれど──
それでも、今の私にとっては、『勝ち筋』を見極めて選び取ることのほうが重要なんだから。
ようやく方向性が定まって、思考が落ち着いくと同時に。
スタジオの、沈むような静けさが耳に戻ってくる。
外は、すっかり深夜。
天井の明かりの下、鏡に映る自分の姿だけが、この空間にぽつんとある。
けれど──
もうさっきまでの焦燥感はゼロだった。
「──よし」
ひとつ小さく呟いて、立ち上がる。
まずは、巫静琉に使用曲の変更許可を取りに行こう。
一応、前日までであれば使用曲の変更は柔軟に受け入れてくれると言っていたし、おそらく大丈夫。
そして、そのあとはスタジオに戻って、この曲をどんなふうに表現するのか、一から解釈し直して。
最悪、今日寝られなくてもいいから──
明日までに、私の表現を最大値まで引き上げる。
大丈夫。私は、本番には強い。
そう自分に言い聞かせるようにして、私はスタジオから一歩足を踏み出す。
──小さな箱の中、焦燥感に閉じ込められるのは終わりだ。
根性でどうにかするんじゃなくて、ロジックで最善を選んで、切り抜ける。
それが、私のスタイルだ。
大切な人を守るためにも、今回のバトル──
決して、妥協なんかしない。
私は決意を新たにすると、胸の奥に張り詰めた不安を振り切るように、小さく息を吐いたのだった。
