さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……え。

知ってる……?

じゃあ、なんでそんなこと言ったの?


彼の言葉の意図が分からず、怪訝に思って眉根を寄せる私に。

遥風は、する、と頬を撫でながら、落ち着いた声音で続けた。


「……じゃあ、これが違うって分かるならさ」


指先が、熱を確かめるように頬をなぞる。


「お前が今自分を責めてんのも違うって、分かるだろ?」


その言葉を、聞いた途端。

ぐちゃぐちゃに絡まってどうしようもなかった思考の糸が──

すっ、と解けて。


私の中に重く沈殿していた『罪悪感』の塊がふわりと宙に浮き、音もなく霧散していくかのような。

そんな感覚に、陥った。


……ああ。

そっか。


私は、いつの間にか──

式町睦の罪を、自分だけの罪にすり替えてしまっていたんだ。


自分が強くなりさえすれば、全部解決する。

だから、自分が強くなれなければ、全て自分のせい。


そんな極端な思考を抱いてしまうようになったのは、一体いつからだったのだろう。


遥風が必要以上に自分を責めた時は、そんなのは間違いだって分かるのに。

自分のことになるとやっぱり私は鈍感で、思考回路が歪んでるってことに微塵も気づけなかった。


「……バカだね、私」

「ちょっとな。……けど可愛いよ。そういうのも含めて全部」


思わず自虐してしまった私に、遥風は甘く目を細めてそんな言葉を落とした。

久しぶりに聞いた遥風からの甘い言葉に、心臓の奥の方がギュッと切なくなる。


女遊びしてたからか、口説くの上手くなったな、この人……。

今のこのメンタル状態でそう言われると、つい自分の全部を彼に預けてしまいたくなる。


けど、それはきっと危ない。

自分の軸を他人に明け渡したら最後、きっとその人がいないと生きていけなくなってしまうから。


私は必死に自分にそう言い聞かせ、これ以上ズブズブになってしまわないように、やんわりと遥風の身体を押し除けた。