──そして、数秒後。
「……なぁ、千歳」
ぽつり、と不意に耳元に落ちた遥風に、ぴくっと身体が強張る。
「……何?」
私が聞き返すと、彼は少し躊躇うような間のあと──
どこか自分に苛立っているような声音で、ボソッと落とした。
「……ごめんな。俺が父さんのこと殺せなくて」
一瞬。
何を言っているのか分からず、思考が停止しかける。
父さんのこと、殺せなくて……?
衝撃発言に何も返せず黙りこくってしまう私を知ってか知らずか、遥風は続ける。
「俺が昔、父さんのことを殺してさえいれば、今の千歳にこんな思いをさせることもなかった。本当にごめん」
……え。
一体、何をどうしたら──
そんな思考になるの?
遥風は、紛れもない被害者側で、全部式町睦が悪いのに。
息子に『殺すべきだった』なんて思わせてしまうような親が、全部悪いに決まってるのに。
ああもう……絶対これ、私のせいだ。
私がグズグズしているところを見られたせいで、また遥風が、抱えなくていい責任まで全部背負おうとしてる……!
そう思った私は、慌てて顔を上げ、その言葉を訂正しようとする。
「ねぇ遥風、それは違っ……」
言いかけて、言葉が止まった。
──遥風が、顔を上げた私の頬に両手を添え、固定したから。
至近距離で視線が交錯して──その綺麗な瞳を前に、思わず何も言えなくなってしまった。
遥風は、ジッと私を見つめたまま、口元をふっと緩めた。
「……ん、違うよな。知ってる」
