間近で濃く香る、爽やかな遥風の匂い。
冷え切った身体に滲む温かな体温。
さら……と私を落ち着かせるように頭を撫でる手つきが、どうしようもないくらいに優しくて、胸の奥の一番弱いところが痛いほどにギュッとなる。
──私は、決して遥風に慰められていい立場じゃない。
けれど、遥風は私がそう思っていることをきちんと見透かして──
わざと私が抵抗できなくなるようなことを言って、抱きしめてくる。
そういうところが、ずるい。
「……手回して、千歳」
「え、」
「早く。俺に申し訳ないって思ってんでしょ?」
耳元でそう囁かれ、私はうっと言葉に詰まり──数秒間、逡巡した後。
恐る恐る、遥風の背に手を回す。
ぎゅ、と弱い力で抱きしめると、遥風は『よくできました』とでも言うみたいに私の頭を優しく撫でた。
──ああ。
なんで、そんなに優しくしてくれるんだろう。
今の私は、何もできない──
ただ、遥風の夢を妨げるだけの邪魔者なのに。
遥風に抱きしめられる資格なんてないはずなのに──。
そんなふうに、頭では自責的な思考を巡らせていても、身体は正直で。
子どもをあやすみたいに、優しく頭を撫でられるたびに、暴れていたはずの鼓動が徐々に一定のリズムを取り戻し、苦しさが和らいでいくことに気づく。
そのまましばらく、遥風は何も言わずに私のことを抱きしめていた。
