さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


その夜。

私は夕食を済ませた後、逃げ込むようにLUCAのダンススタジオへと向かった。

明日のパフォーマンスバトルの練習用として割り当てられたスタジオ。


ガチャ、と扉を開けると──そこには、誰の姿も無い。

出演者全員共用のスタジオのはずなのに。


──本番前夜にここまで必死になって足掻くのは、私だけってことなんだろう。


ちょっと虚しくなってしまいながらも、私は用意してきた楽曲を再生し練習を開始した。


けれど。

何回踊っても、何回歌っても。

驚くほどに、上手くいかない。


合宿前に、いつもの何倍も追い込んで練習してきたはずなのに。

それでも、私の努力は甘かったのだろうか。


今、鏡の中に映る自分は──

世界で一番、不恰好に見えた。


歌も、ダンスも、それらしい形はしている。

けれど、その全てが、中身の空っぽな偽物の表現。



何も、届かない。届けられない。



自分でも分かってしまう──

これが、ローガンのいう、ヴァレンシアのいう、ユアンのいう『機械』みたいで『つまらない』『操り人形』のようなパフォーマンス。


けれど、それがようやく自覚できたからといって、今まで作り上げてきた私のパフォーマンスが一夜にして飛躍的に良くなるはずもなく。


ただただ我武者羅に練習を繰り返しては、自己嫌悪に陥って、そんな自分に鞭打ってまた立ち上がって──


そんな意味のないことを、延々と続けるしかできなかった。