さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



少し驚きながらも、「うん、ありがと……」とだけ小さく返すと。


遥風は薄く笑って頷き──
そのまま、勝ち誇ったような視線を栄輔に投げた。


「な?やっぱお前より俺の方が千歳について詳しいから。余計なことしなくていい」

「はぁ〜……??」


明らかに挑発するような遥風の口調。気遣いを『余計なこと』と一蹴され、苛立ったように眉根を寄せる栄輔。

二人の間に、バチッと大きな火花が散るのが見えた。


あぁもう、またこれ……。

遥風の嫌味ったらしいマウント癖が治るには、まだまだ時間が必要そう。


と、ちょっと呆れてしまう私の隣で、同じくうんざりしたようにため息を吐いたのは翔だった。


「はいそこまで。喧嘩してないでさっさと座って」


きっと幼い頃からこうして彼らの喧嘩を仲裁し続けてきたのだろう、彼がごくごく慣れた様子で二人の間に入ってくれたので、修羅場寸前だった空気が解消された。


とはいえ、栄輔はまだイラついてるみたいで何か言いたそうだったけれど──翔は決してそれをさせまいと、彼を無理やりテーブルへと引きずっていく。


栄輔と遥風が一緒にデビューするとしたら、絶対に天鷲翔の存在は必須だな……。

呆れ混じりにそんなことを思いながら、私も彼らに続いて空いている席に腰を下ろした。


……今まで、日本でこの四人でご飯を食べることは一回も無かったから、違和感しかない。
っていうか、まず皆戸遥風と冨上栄輔が同じ食卓に着いているってことが死ぬほど有り得ないことなんだけど。

何が起こるか分かんなくて怖いな。どうか、食卓を引っくり返すような喧嘩は起きませんように……と密かに祈っていた、その時。


「……怯えないで、千歳くん。俺、こう見えて遥風には煽られ慣れてるんで、喧嘩なんかしませんよ」


まるで私の頭の中を読んだかのように、栄輔がちょっと肩をすくめて言った。


…………ん?

私、今、思考が声に出てた?


いや、そんなことはないはず。声に出てたら流石に自分で気づける。

じゃあ、なんで……。

ちょっと呆気に取られたような顔をする私に、隣から遥風が揶揄うように言ってきた。


「……今のお前、表情管理ザルすぎて考えてること全部分かるって」


その言葉に、思わずピシリと表情が凍りついた。

嘘……。