私はどうしても彼のように素直に食事を楽しむ気にはなれなくて、思わず目を伏せた。
さっきからずっと、ボーカルレッスンでヴァレンシアに告げられた言葉が何度もリフレインし続けている。
『That’s boring.(つまらないわ)』
──結局、あの後のボーカルレッスンでは、翔も遥風も栄輔も、私以外の全員が彼女から高評価をもらっていた。
翔はその超人的な歌唱力で舌を巻かせ、遥風も声に感情を滲ませるのがとてつもなく上手いと驚かれて。
そんな中で──
最もヴァレンシアの目を輝かせたのは、栄輔。
『You didn’t just sing the song…you became it. Absolutely stunning. That’s a gift, sweetheart. A precious one.(あなたはただ歌ったんじゃない、歌の主人公そのものになっていたわ。全く見事だった。それはあなたの才能よ、大切にしなさい)』
そんな最高級の褒め言葉と共に、彼の憑依型のボーカルを惜しみなく絶賛していた。
──ちなみにあの後、問題児のユアン君はというと。
途中で「トイレ」とだけ言い残し、部屋を離れたきり、そのままレッスンに戻ってこなかった。
普通に考えてありえない。
でも──きっと彼なら許されるんだ。
特別だから。
どれだけ悪態をついても、遅刻しても、ふらっと居なくなっても、彼は、ステージ上では眩い光を放つ『宝』になるから。
誰も強く咎められないし、現にこうして『エリート』の集まるクラスに幼いながらも所属している。
対して──私は、どうだろうか。
小さい頃から、真面目に、優等生として積み上げてきた技術。
正確な音程、整った発声、全てをコントロールして歌う力。
従順に言うことを聞いて、遅刻なんて一度もせず、毎日十時間以上のレッスンを積み重ね磨いてきたはずなのに。
血の滲む努力の末なんとか掴み取ったはずのスキルは──
全部偽物の、ガラクタに過ぎなかった。
考えれば考えるほどプライドが深く傷ついて、立ち直れる気がしなくなる。
