その後、ボーカルレッスンが終了したのは19時を過ぎた頃だった。
窓の外はすっかり夕暮れで、鮮やかな赤色に染まったロサンゼルスの空は、日本のそれとは雰囲気が違ってすごく綺麗。
だけど──
それに見惚れている余裕なんて微塵もないほど、私の気持ちは重く沈み込んでいた。
もう、呑気に異国情緒を楽しんでいる暇なんてない。
今すぐにでも練習用のスタジオに篭って明日の準備をしよう──そう思っていたのに。
「千歳くん、ご飯食べないとぶっ倒れますって」
そう栄輔に怒られてしまい、結局、敷地内にあるカフェテリアに引きずられていくことになった。
カフェテリアは、スタジオなどのある棟とは少し離れた場所に別棟として位置していてる。スタジオ周辺の埃ひとつない息苦しい空気から束の間解放される、トレーニーたちの憩いの場らしい。
ピーク時は席が取れないくらい混むらしいんだけど、今日はエリートクラスのレッスンが他よりだいぶ長引いてしまったせいで、中にいる人影はまばらにしか見受けられない。
全面ガラス張りの建物に入館証をかざして入れば、いかにもアメリカらしいセルフサービスのカウンターがずらりと並んでいた。ホットミールにサラダ、パンにデザートまで──色とりどりの料理を前に、思わずちょっと目を細める。
今の状態で、こんなガッツリした食事が喉を通る気がしないんだけど……。
サラダだけ取ってさっさと帰るか、なんて考えてしまう私とは対照的に、めちゃくちゃはしゃいでいる様子の栄輔。
「おい翔見て、でっかいエビ!!こんなんザリガニじゃん食えんの?!」
「あんま走んなよ、栄輔〜」
目を輝かせてうろちょろする栄輔を慣れた様子で嗜める翔。その光景は、側から見ればスーパーに買い物に来た親子の構図そのものだ。
あんなにキツい練習後だっていうのに、よくそこまで騒げるな、栄輔……。
