な、なんか……すんごい子が来たけど。
彼の尊大な登場に、その場にいたトレーニーたちはというと──
何故か、マスコットキャラクターが来たかのように黄色い悲鳴を上げていた。
「Ewie, you hiding again? That was adorable.(ユーイ、また隠れてたの〜?可愛すぎるんだけど♡)」
「Ewie, keep being late and boom—say goodbye to the elite class♡(ユーイ〜、そんなに遅刻してたらエリートクラスとバイバイになっちゃうわよ〜♡)」
「I ain’t your pet, bitch! Stop calling me Ewie!!(俺はペットじゃねぇんだよクソビッチども!!あとユーイって呼ぶな!!)」
女性陣たちにぐしゃぐしゃと頭を撫でられながら、声を荒げて抵抗する『ユアン』。
この子、綺麗な顔面とボキャブラリーの治安の悪さが釣り合わなさすぎでしょ……。
「Alright, then. As punishment…Ewan, you’re up next. I’m going brutal on you.(じゃあ罰ゲームとして次はユアンの番ね。めちゃくちゃに厳しくいくわよ)」
ヴァレンシアがパンッと手を叩いて、その少年を指名した。ボーカルスタジオ内に、女子トレーニーたちがキャッキャと煽る声や笑い声が飛び交う。
けれど、当の本人は。
「Yeah, yeah. Pain in the ass.(はいはい、面倒くせぇな)」
全く動揺した様子もなく、乱暴に椅子を蹴って立ち上がる。
無造作にポケットへ手を突っ込んだまま、ひょこひょこと前へ歩いてくると、ちょうどマイクの前にいた私とすれ違う。
すれ違いざま、ちらりと私を見上げた瞳は、何の感情も宿していないような無機質なグレー。
……でも、たったそれだけの視線の交錯で、心臓がドクンと跳ねた。
この子は──
きっと、私に無い何かを持っている。
そう、直感的に思ってしまった。
世界中の才能たちに囲まれ、ヴァレンシアに厳しい視線を向けられるこの状況──
こんな小さな少年が、萎縮しないはずがないのに。
その瞳に、虚勢の色は微塵もなくて──
逆に、極限まで研ぎ澄まされた、静かな自信が据えられていた。
