カチャ。
スタジオのドアが、静かに開く音。
ひょこっと顔を覗かせたのは──
まるで、おとぎ話の絵本から抜け出してきたみたいな、小さな男の子だった。
思わず、息が止まりかける。
年齢はおそらく十歳前後だろうか。
銀色の柔らかなストレートヘアに、透き通るような白い肌。
長い睫毛に縁取られた瞳は、青とも灰色ともつかない神秘的な色。
──神様の最高傑作とも思えるような、儚げで神経質そうな、天使みたいな男の子。
そんな彼が、まるで壁と一体化するみたいに、そろりそろりと足音を殺してスタジオ内に入ってくる。
…………?
あ、もしかしてそれで遅刻がバレてないつもり……?
と、若干呆気に取られていた、その時──
「Ewan!!(ユアン!!)」
ヴァレンシアの鋭い怒声が、ビリッと空気を揺らした。
その声圧に、思わず小さく肩が跳ねる。
「That makes it five times this week. Five! When are you finally gonna show up on time?(今週だけで五回目よ、五回!いつになったら時間通りに来るつもり?)」
「Tch. Chill out, you old hag!!(チッ……うっせぇな、クソババア!)」
「Say that again and I’ll slap you into next week.(もう一回言ってみなさいぶっ飛ばすわよ)」
声変わり前の綺麗な声に似合わないとんでもない悪態をつく少年に、ヴァレンシアはぴくりと表情筋をひくつかせる。
ワールドエンタメ界の女王の貫禄に怯むこともなく、少年はふてぶてしい態度を崩さないまま空いている椅子にどかっと座った。
