さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


ちょっと残念そうに、首を傾げて言ったヴァレンシアに、ざわっとどよめく部屋の中。

私はちょっと視線を落として、彼女の言葉を受け止めた。


「You sing like an AI. No emotion, no story. Just… data.(AIみたいに歌うのね。感情もない、物語もない。ただの……データ)」

「……」

「You're not singing to move people. You’re singing to get a grade. That’s boring.(あなたは人の心を動かすために歌ってない。評価をもらうために歌ってる。それって──つまらないわ)」



『つまらない』。



その単語が、まるで氷の針みたいに、私の心臓を真っ直ぐ突き刺した。



……つまらない、って。


評価をもらうために歌ってる、なんて言われても──


どうしようもない。



だって、私はずっと──

評価のために歌ってきたんだから。



成果を示したら、愛をもらえるんじゃないか。

そんな期待のもとで、ずっとずっと、機械みたいに知識と技術を学習して、正解を計算しながら歌って。

それが、私にとっての『歌』なんだから。


──そんな根本から否定されては、私に残るものはもう何も無かった。


手が、震える。


じわ、と視界が滲みかけたのを堪えるように、下唇をギュッと噛んだ。



……全部、意味なんて無かったのかな。

今までやってきたこと、全部全部、無駄だったのかな。



同年代の子たちが放課後にカラオケに行ったり、ご飯に行ったりして遊んでいる時間──

私は毎日、一人で鏡張りのレッスン室にいた。


学校で『付き合い悪いよね』と距離を置かれ、変な噂を流されて一人ぼっちになっても。

喉が潰れるまで練習して、声が出なくなって『自己管理がなってない』と何度も殴られても。

泣いたら怒られるから、泣けなくて──

いつしか、自分の感情を無視するのが当たり前になって。


そんな犠牲の行き着いた先が──



『つまらない』



そんな一言だけで切り捨てられるのなら。



私は一体、どうしたら良かったって言うの……?



目の前が真っ暗になるような喪失感を前に、何も言えなくなっていた──


そのときだった。