さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「He’s actually good.(結構上手いな)」

「Beautiful tone.(声質が綺麗)」


少し離れた場所から聞こえてくる、英語の感想たち。

正真正銘の実力者たちからの肯定的な言葉に勇気づけられつつ、私は調子を保ってサビまで歌い上げる。


そして、最後のフレーズを丁寧に着地させると──

ふっ、と胸の中に張り詰めていた空気を吐いた。


……特に目立ったミス、無し。

きちんと、模範的な歌唱力を見せられたと思う。


その証拠に、エリートクラスのトレイニーたちの反応も概ね良い。


「He’s got range, too.(音域も結構あった)」
「Such control…(コントロールよかったね……)」


感嘆のため息混じりの英語の囁きが、ぽつりぽつりと弾ける。

そのすべてが好意的で、私の中の緊張を少しずつほぐしていく。


──大丈夫。

歌だけは、昔からセンスがあるって言われてきたんだ。

十数年、必死に積み上げてきた努力は、そう簡単に崩れたりしない。


そう、自分に必死に言い聞かせるようにして、私はヴァレンシアの言葉を待った。

数秒間、沈黙の後。


「Yes… That was solid. Surprisingly accurate pitch, great breath control, clear phrasing.(ええ、しっかりしてたわ。驚くほど音程が正確で、ブレスのコントロールも完璧。フレージングも明瞭)」


落とされたヴァレンシアの艶やかな声に、ちょっと息を呑む。

褒められ、ている。

喜ぶべきことだ。


ネガティブなことは何も言われていない、はずなのに──


私は彼女の目を見て、言われる前になんとなく察してしまった。


ああ、きっと。


彼女は──



「But, It’s too perfect.(でも、あまりに完璧すぎね)」



私の歌を気に入らなかったのだ。