さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


そして、数時間後。

ようやくダンスレッスンを終えたとき、とうに私の体力は底をついていた。


結局あの後、翔と遥風はずっと一列目で、圧倒的な存在感を見せて。

栄輔も、回を重ねるごとに振り付けのディテールまで完璧に仕上げてきて、最終的には二列目にまで上り詰めていた。


対して、私はというと──

最後まで、後列に残った。


……当然だ。


誰の目から見ても、私がレッスンのスピードに全く着いていけていないことは明白だったんだから。


……悔しい、なんて感情すら薄れてしまうほど、打ちのめされていた。


私なりに、頑張って準備してきたつもりだったのに──

まさか、ここまで手も足も出ないだなんて。


目の焦点を合わせる努力すら億劫で、スタジオの隅でタオルを被ったままぼうっとしていた──

その時。


「Hey, Japanese crew! Vocal lesson’s next. Move it!(日本のクルー!次はボーカルレッスンだ。急げ)」


頭上で、ローガンのハキハキした英語が響いた。



ボーカルレッスン……?

まだそんなものが残ってるの?



もう既に全エネルギーを使い切ってしまっていた私は絶望的になるけれど、だからといって置いていかれるわけにはいかない。

ぼやけた視界の中、壁に手をついてよろよろと立ち上がる。


「おい千歳、マジで無理すんなよ」


隣から心配そうに声をかけてくれたのは、遥風だった。

その声に応えようとしたけれど、喉がカラカラで、上手く答えられない。


そんな私を前に、遥風はちょっと苦しげに眉根を寄せると、何も言わないまま私の腕を掴んで自分の肩に回させた。



──私が遥風を助けるって意気込んでたはずなのに。

私が助けられてどうするんだろう。



虚しくなりながらも、「ありがと……」となんとかお礼を言うと、遥風はちょっと目を逸らし、黙って頷いた。