さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

と、悲観的になる私に対して、同じく後列に残された栄輔は、大して焦った様子もなく。


「あー……このシステムかよ。最悪」


と、ゲンナリしたように毒づくだけだった。


『このシステム』?


少し怪訝そうな顔にする私に気づいたのか、栄輔が私に向けてさらりと説明してくれる。


「ほら、上手い奴は前に出されて、下手な奴は下げられるってやつです。最後列に残された人が、次回からクラス落とされるっていう──入れ替わり制。俺らが通ってたエマ傘下のスタジオでも、これ採用されてたんすよね。それが結構トラウマで」


その言葉を聞いた途端、すぐに合点がいった。


……なるほど。

きっと、この『絶対実力至上主義制』は、ルシアン・クロフォードの流儀。
今のエマの合理的な才能選別主義も、きっと彼の思想のレガシーなのだろう。

そして、エマ傘下のスタジオに通っていた三人にとって、この空気感は日常。

だから、翔も遥風も栄輔も、この無茶な状況に少しも動じることなく、受け入れているんだ。


「まあ……後列でもしょうがないっすよ。初級クラスとは言っても、合宿に参加することを許されたエリートばっかなんですから」

「……うん」


でも、私は明日、そのエリートの中のエリート相手に勝たなきゃいけないのに。


このままじゃ、絶対にダメなのに。

願っても急にスキルが伸びるわけじゃなく、私はただただ何もできずに焦燥に駆られるだけで。


……本当、どうしたらいいんだろう。


「Let’s hit it again! From the top!(もう一回行こう!頭から!)」


絶望的になる私を待ってくれるはずもなく、再びスタジオに鋭く響くMr.Dの声と共に、再び流れ始めるトラック。



肌をビリビリと揺さぶるような大音量が、今はどうしようもなく気持ち悪くて。

私はただ、浅い呼吸の中、ツギハギの振り付けで食らいつくしかできなかった。