さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


トン、と軽く背中を叩かれる感触。

思わず視線を向けると──


「……キツい?」


遥風が、ちょっと心配したように私の顔を覗き込んでいた。

さら、と乱れた前髪の下、瞳に瞬く優しい光に、かえって胸がギュッと締め付けられる。


「……平気」


笑って誤魔化そうとしたのに、そう答えた声は、自分でもびっくりするくらい細くて。

遥風はそんな私を前にちょっと息を呑むと、暫し沈黙。


数秒の間の後、顔を上げ、何か言いかけるように口を開いて──


と、その時だった。


「Back row. Japanese boys. The tall one next to Sho, and Sho himself. Second row. Replace Matthew and Rachel.(後列の日本人。翔と、隣の背の高いお前は二列目へ。マシューとレイチェルと交代だ)」


鏡の前から、Mr.Dの鋭い声が飛んできた。

その言葉に、遥風はちょっと驚いたように目を見開く。


そして──再度言葉を探すように、ちょっと躊躇った後。


ぐしゃ、と。

私の頭を、軽く撫でて。


「大丈夫」


それだけ残すと、翔と共にMr.Dに指定された場所へ進み出た。


──変に、頑張って、とかじゃなくて。

私を安心させるような言葉を選んでくれるあたり、遥風なりの優しさなんだろうな。



けど。

大丈夫なわけないよ、遥風。


私は明日、こんなにもハイレベルな環境で育った精鋭たちと、遥風の未来を賭けて戦わなきゃいけないんだから。


このままの自分で──大丈夫なわけがない。