「──っ!」
心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。
ちょっと待って、待って待って待って。
なんで……みんな覚えてるの?
たった一回、しかもそれを知らされないまま、流すように見せられただけの振り付け。
それを当然のように再現している周囲の動きに、全く追いつけない。
脳も身体も、ただただパニックを起こしていた。
と、そんな私の横で──
視界の端で、誰かが大きくステップを踏み出すのが見えた。
遥風だった。
ただいつも通り、元から頭に入っていた振り付けを流すかのような圧倒的な余裕。
そこまで本気で踊っている感じもしないのに、流れるような、一瞬の隙もない完璧な動きに、思わず視線が奪われる。
力を抜いた踊り方に見えるけれど、私が全くどうなっているか分からなかった足の複雑なステップなんかは、バシッと音にはめて華麗にこなしていて。
今の一瞬で、どうしてそこまであのとんでもない振り付けを紐解けたのか不思議でならない。
そして、その横の栄輔も。
完全にスイッチが入ったみたいに目の色を変え、完全にステージモード。
今の一瞬でMr.Dの動き方のクセまで分析したらしく、重心低め、ヒットも重めで、いつもの彼よりはるかにダンサー寄りの踊り方。
まだ完全に振りを落とし込めてはいないものの、動きの枠はきちんと掴めている。
そして……極め付けに、天鷲翔。
最後列にいるも関わらず──
全ての視線が、否応なく、彼に吸い寄せられていく。
しなやかな筋肉を限界まで使った、全くもって体幹のブレないダンス。
爆発するような力強さのあるヒット、身体のラインを魅力的に魅せるポージング。
先生の手本にも劣らないほどに全ての音を正確に拾い、まるで彼の身体から音が鳴っているかのような錯覚。
乱れた前髪の下から流される魅惑的な視線に、思わず息をするのも忘れる。
──表情に気を遣って、『魅せる』余裕まであるなんて。
