さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



やっ、ばぁ……。


人間のスキルではないものを目の当たりにし、声も出なくなる私。


対して、レジェンドの本気コレオにワッと大盛り上がりするトレイニーたち。

今からこれを入れると思うと、気が遠くなる……果たして日が暮れる前に完成させられるのだろうか。


と、思わず頭が痛くなっていた、その時。


「Alright, now your turn!(よし、次は君たちの番だ!)」


当然のように放たれた、Mr.Dの言葉。

それと共に、トラックは冒頭まで巻き戻され、再度鋭いビートが流れ始める。


──ん?

待って。


今……『your turn(君たちの番)』って言った?


どういうこと……?

戸惑う私を置いてけぼりにして、曲はどんどんコレオ部分に向かって進んでいく。


ちょ、ちょっと待って、この後、軽い解説とカウントくらいはありますよね……?


そう思って、慌てて周囲に視線を走らせてみると。



無茶振りに嫌そうな顔をしながらも、さらっと流して踊りながら脳内で何か整理してるみたいな栄輔。

目を閉じ、無言で先ほどのダンス映像を脳内再生してるみたいな遥風。

そして──

翔に至っては、ポケットに手を突っ込んだまま、余裕ですとでも言うように突っ立っている。



嘘、待って……。



冷や汗が滲むけれど、当然トラックは止まってくれるはずもなく。

Mr.Dが、手を叩いてカウントを始めた。


「5,6,7,8!!」


そして──


ドンッ!


爆音のビートと共に、全員の足音が揃った。



──私を、除いて。