さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……あのー」


ふと、背後から不満げな声がかかった。

振り向くと、そこにいたのは──栄輔。


ちょっと口を尖らせて、何故か不貞腐れているような表情でこちらを見ていた。

少し首を傾げる私に、栄輔は拗ねた口調で続ける。


「今までツッコまないでおいてあげましたけど……なんで俺以外全員英語ペラペラなんすかね?」


……あ。

それは、申し訳ない。


栄輔が会話を理解できていないことに全く気づかず、今までずっと話を進めてきてしまっていた。

ちょっと罪悪感を抱く私に、ブツクサと続ける栄輔。


「俺ね、翔が英語ペラペラなことは知ってたんすよ。けど何?なんで遥風も千歳くんも普通に会話してるんすか?仲間だと思ってたのに……」


拗ねたような栄輔の言葉に、思わず顔を見合わせる私と遥風。

多分だけど……二人とも理由は同じだ。


「……親からの英才教育」

「俺も」


私が答えると、案の定、遥風もすぐに乗っかってきた。


──別に英語は、好きで学んだわけじゃない。

死んだ母親は、私を世界で活躍するようなアイドルに育てることに固執していた。そうなると、やはり世界共通言語である英語は必要になるわけで。

幼い頃からダンスや歌のレッスンと共に、英会話のレッスンも受けさせられていたのだ。

英会話だけでなく、ピアノやバイオリンなどの楽器やクラシックバレエ、そして演技レッスンなど──
施された教育の数は、到底数えきれるものではない。


そして、そのどれもが、初心者には到底合っていないような高レベルなものばかり。


上級者ばかりの環境に放り込んで、必死に努力させてスキルを跳躍させる。

母は、そういう荒療治が好きな人だったのだ。