その後、私たちはローガンに連れられてLUCAのレッスンスタジオへと向かっていた。
エマプロで使うスタジオ棟もとんでもなく設備は充実していたけれど──
LUCAのレッスン施設は、それすら霞んでしまうほどに洗練されていた。
等間隔で設置されたパネルがクラスごとのレッスンスケジュールを映し出していて、トレーニーたちはそのパネル前で顔認証を受け、自動ドアの中に消えていく。
壁も床も真っ白で、埃ひとつない。
ロビー付近に漂っていた海外特有の空気感も既に完全に払拭され、むしろ、新品の電子機器を開けたときみたいな無機質な香りが薄く漂っていた。
……なんだか、最高品質のアーティストを作るための工場みたい。
全てが完璧すぎるせいで、自分の『不完全さ』に否が応でも居心地の悪さを覚えてしまうような、そんな感じ。
と、完全に気圧される私の様子に気づいて、声をかけてきたのはローガン。
「What’s wrong? Want me to hold your hand, princess?(ビビってんならお手々つないでやろうか、お姫様?)」
片眉を上げ、完全に舐めた笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる彼。
私が男だと分かった上でのお姫様扱いは……きっと、最大級の挑発なんだと思う。
この人、さっきから人を見下すような態度ばっかり取ってきて結構苦手だな……。
できるだけ関わりたくない私は、すぐに顔を背け、「No, thanks.(結構です)」と短く断った。
けれど。
「Aw, come on. Don’t be shy now.(おいおい、照れんなって)」
ローガンはふざけたような笑みを崩さないまま、私の肩に腕を回して軽く揺らしてくる。
突然の接触にビクッと微かに身体が跳ねかけ、慌てて抑えた。
