と、そんな微妙な空気が流れる中──
不意に、高速タイピングを繰り返していたルシアンが動きを止め、くるりと私に向きなおって話しかけてきた。
「By the way, Chitose(ところで、千歳)」
その琥珀色の瞳、見透かすような視線に捉えられ、思わず背筋が伸びる。
わざわざ名指しして話しかけてくるなんて、一体なんの話題……?
ちょっと身構える私に、ルシアンは口元だけにこりと微笑んで、ラップトップのスクリーンを私に見せてきた。
「I’m well aware you’re a man, of course—but if we happen to win this performance battle, would you do me the honor of wearing this costume?(君が男性であることは百も承知しているが……もしパフォーマンスバトルでこちらが勝ったら、このコスチュームを着てみてくれないか)」
そのスクリーンに写っていたのは──
秋葉原のメイドカフェで見かけそうな、猫耳付きメイドコスチュームだった。
黒とピンクを基調にしたフリル盛り盛りの本格派。
妙に質の良さそうなふわふわの猫耳と尻尾。
首元には、鈴付きのチョーカー。
………………。
えーっと。
さっきまで猛烈な勢いでタイピングしてたの、仕事じゃなくて……これ探してたんですか?
