そんな言葉と共に、不意にローガンの視線がこちらに向いた。
……え、私?
……っていうか、今、聞き間違いじゃなかったら『プリンセス』って言われたような。
本日二回目の、性別誤認……いや、まあ合ってるんだけどね。
私はローガンの雰囲気に若干気圧されつつ、今度こそ訂正しておこうと慌てて口を開いた。
「I'm a guy. Use something else.(俺、男だから。別の呼び方にして)」
そう言うと、ローガンは初めて先ほどまでの嫌味ったらしい薄ら笑いを崩し、ちょっと困惑したように眉根を寄せた。
「Uhh… was that your Asian joke?(……それ、キミのアジアンジョーク?)」
ああ、また信じてもらえない……。
やっぱり、外国人が『中性的な男性』を認識することは難しいのかな。
日本人は、アニメや漫画文化なんかを通して、見た目が中性的でも男だと認識するような訓練を積んでいるし、何より中性的な外見の男子に対するポジティブな共通認識がある。
外国人にはそれが無いから、こういう勘違いがしばしば起こってしまうんだろうな……。
と、またもや行き詰まってしまった私に助け舟を出したのは──意外な人物だった。
「Logan, he’s definitely a guy.(ローガン、彼は間違いなく男性だよ)」
声の主は、ルシアン。
ソファの背もたれに身を預け、組んだ脚の上でカタカタとラップトップを操作していた。
重要な仕事でもしているのだろうか、その眼差しはスクリーンから離されることはない。
「Huh…?! Well, yeah, I guess it did seem kinda weird. You never blushed or squealed when you looked at me, not even once.(はぁ……?!まぁ……でも確かに、こっちを見ても少しも頬を赤らめないし騒がないし、おかしいとは思ってたけど)」
あり得ないものを見るかのようにじっと見下ろしてくるローガン。その視線の強さに、ちょっと居心地が悪くなって首をすくめてしまう。
