さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


──と、そんな思考を巡らせていたとき、ふと。


「Wait, is that Sho Amawashi?!(待って、あれって天鷲翔じゃない?)」


追っかけガールズの中の一人が、口元を押さえて叫んだ。

急に飛び込んできた身近な名前に、耳が反応する。


「No freakin’ way! The Japanese guy who debuted years ago?!(え!あの昔デビューしてた日本人の?!)」

「Have you EVER seen an Asian guy that hot?!(こんなカッコいいアジア人っているの?!)」

「Sho! Follow me on Instagram, here!(翔!!インスタ追加して!!)」


ああ……そっか。

翔は、LUCAからデビューしアメリカでソロ活動していた経験があるから、きっとLUCAのトレイニーたちの間でも知名度はかなり高いんだ。

こんな異国の地でもここまで騒がれる翔、やっぱりすごいな……。

……と、少し感心してしまう私とは対照的に。

窓越しに聞こえる騒ぎを聞き取った本人は。


「はぁ……」


ちょっとうんざりしたようにため息を吐くと。

そのままツカツカと応接室の窓の方に無言で歩み寄り──


シャッ!


勢いよく、応接室についていたカーテンを閉じた。


……よ、容赦ない。


けれど翔といえば、仕事とプライベートはきっちり分ける仕事人。

『今はそういう顔をしていない』時に見られるのはかなり嫌がるんだろう。


超絶塩対応とも取れるけれど、多分これは、必要な線引きなんだ。


だって、もしこの場のファンたちにファンサをしてしまったら──

所謂『近づいたモノ勝ち』になってしまう。


頑張ってお金を貯めて会いにきてくれるファンがいる中で、ほとんど迷惑行為のような形でプライベートに踏み込むファンに甘い対応をするのは──アイドルとして、すごく不誠実。

彼はきっと、それを分かった上で、こういった対応をしているんだろうな。


そういう姿勢、本当に芸能人の鏡って感じだよね……。


と、密かに感心していた、その時。