「Wow. Real classy, guys.(へぇ、品のあるジョークだな)」
熱狂に満ちた空気を、一瞬で凍らせるような──冷たい声が響いた。
振り返ると、そこに立っていたのは──
遥風。
ポケットに手を突っ込んだまま、いつものツンとした表情で目の前の彼を真っ直ぐに見据えている。
騒然とする会場の中、ツカツカとこちらに歩み寄ってくると、ぐいっと私を引き寄せ、背に庇うように立った。
そして。
「Back off. You don’t get to touch him.(下がれ。お前なんかが触れていい人じゃない)」
底冷えするような有無を言わせぬ声音で、キッパリと言い放った。
そんな遥風の威圧感に、大抵の人なら怯むんだろうけど──
目の前の彼は、一瞬硬直しただけで、すぐさま面白いことが始まったとでも言うようにニヤニヤし始める。
「…You hitting that or what?(ほー、そういう関係なのか?)」
際どいスラングを使って軽口っぽく聞いてくる彼に、遥風は挑発するように片口角を上げ、ふっと微笑む。
「Might be. (かもな)」
それだけ言い捨てると、遥風はぐいっと私の腕を引き、広場から連れ出す。
その光景を前に、背後でギャラリーたちがワッと湧き上がるような声がした。
そのまま半ば引きずられるような形で、私は人気のない廊下へと連れ戻される。
……いつもより明らかに速い歩くスピード、手を引く力の強さ。
それが、二次審査のときの余裕の無い遥風と重なった。
怒ってる、のかな。
私が勝手に寄り道したこと、知らない人に絡まれて目立ってたことに。
……いや、そりゃそうだよね。
だって、もし万が一LUCA側のコンテンツでさっきの映像を流されたら、炎上リスクもいいところだ。遥風が止めに来てくれなかったら、一体今頃どうなっていたことか。
迷惑かけちゃったな……。
反省して俯きながら、私は遥風の後ろ姿に小さく謝った。
「……ごめん、遥風」
──遥風の足が、止まる。
彼はこっちを振り向いたようだったけれど、後ろめたくて顔が見られず、私は俯いたままでいた。
何か言ってくるかな、と思ったのだけれど、数秒間、頭上の彼が口を開く気配はなくって──
怒ってるなら、何か言ってほしいんだけど……。
