さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


……と、その時。


「あの……一旦……一旦休みたいんすけど……」


背後から、今にも消え入りそうなか細い声が聞こえた。

振り向くとそこには、翔の肩に手を回したまま、今にもぶっ倒れそうになっている栄輔の姿。


……本気でしんどそう。


飛行機から降りた時点で瀕死だったのに、追い討ちでバス移動もあったせいで、だいぶやられているみたいだ。

と、そんな栄輔に、容赦無く氷点下級の冷たい視線を向ける遥風。


「お前ここでゲロったら出禁な」

「う……」

「おい、栄輔のこと追い詰めんな。プレッシャーかけられたらやらかすから」


ちょっと呻く栄輔を見て、すぐさま焦ったように栄輔を庇う翔。

なるほど、栄輔はプレッシャーかけられるとダメなんだ……だったら、今だけは栄輔への冷たい態度は一旦封印した方がいいな。だって、他所様のロビーで粗相して栄輔が出禁になったらパフォーマンスバトルどころじゃなくなる。

と、そんなことを思っていたところで、先頭を歩いていた静琉がくるりと私たちを振り返った。


そして。


「翔、入館手続きしに行くぞ」

「……今ですか?この状況で?」


静琉からさらりと投下された言葉に、嫌そうに眉根を寄せる翔。

この状態の栄輔から目を離すのがすごく不安なんだろう。

と、そんな翔に静琉は淡々と返す。


「俺は関係者として登録されてるから問題ないけど、お前らみたいな外部参加者は手続きに代表者が一人必要なんだよ」

「……」


その言葉に、翔は心底面倒そうに目を細めた。

代わりに私が行ってやれれば一番いいんだけど……私はそこまで外国のシステムに慣れていないから、こういう場面ではアメリカ在住歴のある翔に任せるしかない。


と、ちょっと申し訳なくなっていたら──


「……じゃあ千歳、見といて」


なんて言いながら、翔は瀕死の栄輔を私に押し付けてきた。

……え、私?