と、そんなことを考えているうちに、いつの間にか目的のバスストップに到着したようで。
ドライバーに『Thanks』と言って降りていく他の乗客を真似して、私も言ってみる。
「Thank you.」
「You're welcome. Have a good day!」
あ、通じた……!
私が日本で勉強してきた言葉で、異国の人と意思疎通ができている。
そんな大したことを喋ったわけでもないのに、その事実にちょっと感動してしまった。
と、いちいち些細なことに感銘を受けながら、ようやくバスから降り立つと。
目の前に待ち受けていたのは──
LAの街の中でも異彩を放つ、圧倒的な存在感の建物。
全面ガラス張りの外壁は、強い日差しを受けてキラキラと光り、見上げれば首が痛くなるほど高い。
そして入り口の上部には、金属質の重厚なロゴ──
『LUCA』の文字。
敷地の前には、ワシントニアパームが等間隔で植えられ、風に揺れる様子は海外ドラマか何かのワンシーンのようだった。
……初めてエマを見た時も、なかなかの衝撃を受けたけれど。
このLUCA本社も、それに全く劣らないぶっ飛んだ規模感だ。
「金かけすぎだろ……」
隣で遥風が寝起きの掠れ声でこぼした言葉に、思わず頷く。
ここは、エマのエンターテインメントを形作った人物が率いるレーベル──
いわば、エマの本家とも言える場所。
その総本山に──私たちは今、挑もうとしているんだ。
そんな実感が改めて胸の中に湧き上がり、私は思わずこくりと喉を鳴らした。
私たちはそのまま広々とした前庭を抜け、自動ドアを通って建物の中へと入る。
ひやりとした空調の風、鏡面仕上げのフロア、高い天井。
その近未来的な整然としたデザインはどこかエマのロビーとも似た雰囲気を漂わせていて、多分こういうスタイルが社長さんの好みなんだろうな、なんて思考を巡らせる。
