「おい、そこの瀕死。高級水だ。ありがたく飲め」
「……い……」
「あ?」
「千歳くんの口移しがいい……」
「冗談言える余裕あるなら大丈夫そうだな」
「ゴフッ」
問答無用で口にペットボトルを突っ込んでくる遥風に、案の定むせ返る栄輔。
相変わらず容赦ない……。
と、そんなやりとりをしている間に、静琉と翔のアメリカ慣れしてる組がLUCA本社へのバスを手配して戻ってきた。
五分後に出るらしい。
一同、荷物を引き摺りながら、バスターミナルまで小走り。終始栄輔が吐かないかヒヤヒヤしっぱなしだった。
と、そんなこんなで、ようやく乗り込んだバスの中。
飛び交うのは、当然のように英語ばかり。
窓の外を見ても、当たり前だけど標識は全て英語表記。
東京みたいに高いビルは少なく、代わりにどこまでも続くヤシの木と低い建物、色とりどりの看板たちが立ち並んでいた。
何気に、きちんと海外に来たのって、これが初めてかもしれない。
電池が切れたように眠る遥風の横で、彩度の高い異国的な雰囲気にちょっと感動してしまう。
しかも、ここにいる彼らは誰も私たちのことなんか知らなそうだ。
日本では変装は必須なのに、この地ではマスクも帽子も取り払って快適に過ごせる。
そういう点では、結構いいかもしれない……。
