くるくると椅子を回しながら、書類に記されているのであろう概要をつらつらと読み上げていく。


「LUCA所属のデビュー前の練習生たちを育成しつつ、同時に宣伝も兼ねてる場だな。ロサンゼルス本社のスタジオで、1ヶ月、映像やドキュメンタリーを撮って、それを世界中の配信サービスで無料公開。まあ──けっこー有名なんじゃねぇの」


パサ、と机に書類を置く音が、やけに乾いて聞こえた。

ロサンゼルス──世界のエンターテインメントの中心、ポップカルチャーの発信地。

そんな大舞台で、エマ創設者率いる事務所の精鋭トレイニーたちと渡り合うなんて、想像しただけで、正直足がすくむ。

けど──

遥風のために、私は彼らと真正面からぶつかって、そして勝たないといけないのだ。


「スケジュールはこうだ」


静琉は資料から視線を上げると──
ボサボサの髪の下、緩く私たちを見回した。


「一日目──合宿レッスンに体験参加してもらう。世界トップクラスの講師による練習法、空気感、レベルの違いを肌で感じてこい。

そして、二日目──成果発表イベントの特設ステージで、余興としてパフォーマンスバトルに参加する」


その言葉に、私の背筋が自然と伸びた。

──来た。パフォーマンスバトル。


「ルールは単純。三対三の個人バトル。観客と両陣営の代表者数人が審査員を務める。勝者が多いほうの勝ち。

──向こうは『選りすぐり』を出すってさ。ローガン・ヒューズ辺り、来るんじゃないか?」


その聞き慣れない名前に、翔の視線が一段と険しくなったのを感じた。

いつも落ち着いている彼には珍しく、少し緊張したような面持ちになったのを見て、内心ちょっと首を傾げる。


……知ってる名前なのかな。


そういえば、翔って、元々LUCAに所属してデビューした経験があるんだっけ。

だとしたら、トレイニーたちの中にも知り合いが多いのかもしれない。