「確かLUCAの合宿企画書がここらへんに……あったはずなんだけど、無いな。最近資料の紛失が多くて困る」
でしょうね。
「あ!これ……ああ、すまん、違った。安斉リナちゃんのグラビアポスターだ」
今度は向こうで栄輔が盛大に吹き出して、翔に無言で足を蹴られていた。
栄輔、ツボが男子中学生すぎる。
「栄輔、知ってるのか?やっぱ巨乳は良いよな。幾つになっても男ってのは巨乳のお姉さんに甘やかされたいもんだ。年上好きか?」
「えっ?いやー、年上……まあ、好きかなー……」
顔を引き攣らせながら、なぜかチラチラとこちらの反応を確認してくるような栄輔。
……あ。この感じ、知ってる。
本当はもっと盛り上がれるのに、女がいるせいで下ネタに気遣ってる男子の反応。
一応、栄輔は私の男装を知らないはずなのに……なぜか完全に女の子扱いされてるの、納得いかない。
「時間が無いので、早く本題に入っていただけるとありがたいんですが」
流石に痺れを切らしたみたいに、笑顔を貼り付けたまま言ったのは翔。
その穏やかな声音に隠された圧に、思わずこちらまでビクッとしてしまう。
けれど、その声を向けられた本人は、大して気にしていないらしく。
「あー、そうだな……あぁ、あったあった。では、とりあえず簡単にLUCAのトレイニー合宿について説明しよう」
静琉は緩慢な動作で、散乱した書類の山から一枚を引き抜き、ぐしゃっと折れ曲がった端を指で伸ばしながら椅子に腰掛けた。
