「……とりあえず、軽く合宿について説明する。全員入れ」


そう言って、振り返りもせずさっさと社長室に入っていく静琉。

私たちは顔を見合わせつつ、とりあえず彼に言われた通り、その重厚な扉の向こうに足を踏み入れた。


すると、そこは──


「うっわ……」


見事なまでの、ゴミ屋敷だった。


まず視界に飛び込んできたのは、デスクを覆い尽くすほどの紙の山。

資料や契約書らしき書類が無秩序に散乱して、申し訳程度にクリップでまとめられているものもあれば、半分コーヒーのシミで茶色くなっているものもある。

机の端に置かれた灰皿は完全にキャパを超えており、吸い殻がボロボロとこぼれ落ちていた。

ソファにも雑誌やCDが無造作に置かれ、座れるスペースはほぼゼロ。

社長室っていうか、限界大学生のワンルームみたいなんですが……?


思わず顔をしかめる私を前に、静琉はなんでもないように言う。


「ちっとばかし散らかってるけど、大丈夫だよな。まあ適当なとこ座って」


その『適当なとこ』が無いんですよね……。

みんなはこの光景をどう思ってるんだろう、と他の三人の表情を盗み見ると。

栄輔はあからさまに『コイツやば』とでも言うような顔、遥風は無表情で目の焦点を外していて、翔は営業用の笑みをなんとか保っていた。


「……俺らは立ったままで大丈夫です」

「なんだ、ストイックだな。まあいい」


いや、ストイックとかそういう問題じゃないから。

呆れを通り越して笑いそうになったのを、なんとか俯いて噛み殺したけど、隣の遥風にバレて横から軽く小突かれた。

……すみません。