さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……遥風、ちょっと」


気持ちを振り切るように、少しだけ強い声で言って。

腕に手をかけて距離を取ろうとした──

そのとき。


「は?」


数メートル先から、冷えたような声音。

ハッとして顔を上げると──
そこには、翔と並んで歩いてくる栄輔の姿。


……あ、まずい。


私がそう思ったのと同時に、栄輔はツカツカと早足でこちらに歩み寄ってくると。

間に割り込むように、私の腕をぐいっと引き寄せた。


「どうして会うたびに迫られてるんですか、千歳くんは?!」


呆れと苛立ちの混じったようなため息混じりの言葉に、申し訳なさと気まずさで目を逸らす。


「いや……今のは、友達同士の、っていうか」


なんとか絞り出した苦しい言い訳に、彼は一瞬目を見開いた後。

こりゃダメだ、とでも言うように、大きなため息を吐いた。

ちょっと首をすくめる私に、咎めるような口調で栄輔は言う。


「そのうち、『友達同士』のスキンシップの一環で襲われることになりますよ?チョロすぎます」

「っ……」


思わず、言葉に詰まる。

確かに、私はだいぶチョロいところがあるとは自覚していたけど──
面と向かって言われると、意外に堪えるな。


思わず俯いていると、今度は頭上から翔の淡々とした声が。


「自分だって千歳の寝込み襲ったのにね」

「「はっ……?!」」


ユニゾンのように完璧にハモる栄輔と遥風。

私も、思わず内心頭を抱える。翔にまで伝わってるのか。椎木篤彦、噂広げすぎ。拡声器ですか……?

盛大に焦り始める栄輔に、遥風の視線が氷点下クラスの冷たさで突き刺さる。