さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜




「手、震えてんだけど」



至近距離。

首を傾げて、さら、と朝日に透ける前髪の下、少し揶揄うように笑う遥風。


「怖がりすぎ、俺のこと」


──あ。

遥風の、いつもの笑顔だ。


もう見られないと思っていた、柔らかい笑顔。

久しぶりに見たその自然さが、胸をきゅうっと痛いくらいに締め付ける。

思わず息を止め硬直する私を安心させるみたいに、ぎゅ、と軽く手を握ってくる。


そして。



「──いいよ。千歳がいいなら『友達』に戻ろう、俺ら」



ふわ、と優しい表情で、柔らかい声音でそう言われて。

喉奥に、ぐっと熱いものが一気に込み上げた。



──ぁ、待って、やばいかも。



一瞬にして視界が滲んで、感情が決壊してしまいそうになる。


「てかごめん、俺今冷たかった?」

「……ちょっと……」

「マジごめん、こっちも死ぬほど緊張してただけ」

「……もー……」


たくさん喋ったら、声が震えて、泣くのを我慢してるのがバレそうで。

言葉を少なくしてなんとか隠そうとするけど──



「……なに、泣いてんの」



遥風相手じゃ、やっぱり気づかれるみたいだった。

その言葉に、一瞬にして視界がじわっと滲んで。


……ああもう、ほんと最悪。


人前で泣くなって、あれほど言われてきたのに。

最近、感情のコントロールが全然できてなさすぎてやばい……。