さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


──期待しちゃってたな。

今日こそ、普通に話せるかもしれないって。


やっぱり、私が遥風にやったことは、そう簡単に許してもらえるようなことじゃなかったんだろう。


でも……


それでも。


図々しいかもしれないけど……
やっぱり私は、遥風とは良い友達でいたい。


昨日のことで、さらにその気持ちが強くなってしまっていた私は──
静かに、口を開いた。


「その……さ」


躊躇いがちに声を出した瞬間、遥風の視線がこちらを向いて。

黒曜石のように綺麗な瞳に捉えられた瞬間、心臓がドクドクと早鐘を打ち始めた。


……ああ、もう、どうにでもなれ。


私は半ばヤケクソ気味に、遥風の顔から目を逸らし、絞り出すように言った。


「……二次審査のときのこと、本当にごめん。許してもらえることじゃないって分かってるけど、


遥風さえ良かったら……

友達に戻りたい、です」


ちゃんと、最後まで聞こえただろうか。

そう不安になってしまうほど、私の声は細くて、頼りなかった。



「あ、……」



返ってきたのは、小さな、戸惑いを含んだ声。

何か言いかけて、けど、すぐに言葉は続かなくて。



沈黙が、落ちた。



胸の奥がヒヤリと冷たくなる。


──やっぱり、今更虫が良い……か。


彼の顔を見るのが怖くて怖くて仕方がなくて、足元に落とした視線を上げられずにいた。



と、次の瞬間。



「……ふ」


頭上から、堪えきれず笑う声。


……え?


驚いて視線を上げたと同時に──


私の手に、優しく遥風の手が重ねられた。