──頭、割れそう。


翌朝目が覚めて、まず出た感想はそれだった。

瞼を開けた瞬間、ズドンと脳天を直撃する鈍痛。カーテンの隙間から差してくる朝の光が、やたらと暴力的に感じる。


人生初の二日酔い。
最悪の目覚めだ。

頭の中に誰か入って、バレーボールでもしてるんじゃないの、これ……。

そんなくだらない思考すら浮かんできてしまうほどの、強烈な感覚だった。


椎木篤彦、本気で嫌いな人リストに追加だな……。

あの胡散臭い薄笑いを思い出して殺意を抱きつつ、私は重い頭を押さえ起き上がる。


スマホで時刻を確認すると、まだ朝の5時だった。

正直もっと寝ていたいけれど……そうもいかない。


今日は、レッスン前に社長室に行かないといけないのだから。


眠気と頭痛と格闘しながら洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗う。

沁みる目薬で無理やり瞼を開かせ、強引に意識を現実に引き戻す。


そのあとは、ウィッグを軽くセットしつつ、脳内で今日のコーデを組む時間。

どうしよっかな、服。社長室に行くんだから、流石にパーカーとかジャージはアウトだよね。

そう考えた私は、シャツに薄手のテーラードジャケットをさらりと羽織って、耳元と首元にそれぞれ適当にシルバー系のアクセサリを足すことにした。

左腕に腕時計を装着して、完成。


これで多分失礼は無いはず……。

レッスンのときは、ジャケット脱げばいいし。


そんなことを考えながら私は部屋を出て、本社棟の方に向かった。