さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

顔を上げると、そこにいたのはよく似た顔の美少年2人組。
金髪と、黒髪。顔は似ているけど、印象は真逆──そう、兎内双子だった。

「暴走すんなバカ。同じ事務所の俺らまで同類だと思われたらどうする」

厳しく明頼をたしなめるのは、黒髪のクールな方──兎内雪斗。透明感のある黒髪に、名前通り雪のような白い肌が映える美少年。

「やめろっ、俺のオタ活を邪魔するな!」

「お前はオーディションにオタ活しに来たのかよ。帰るぞクソボケ」

繊細そうな見かけによらず、キツめの毒を吐きながらずるずると明頼を引きずっていく雪斗。何回か私を振り返り、その度に申し訳なさそうに頭を下げてきた。苦労人なんだろうな……。

「あらら〜⭐︎雪くん、アイドルよりも剥がしのバイトのが向いてそ〜ね〜」

呑気な顔でそんな失礼な発言をするのは、彼の双子の兄、兎内陽斗。こちらは、人気アイドルグループ『LiME POP!』の元メンバー。
ふわりと揺れる金髪に、白い肌。繊細で虫も殺せなさそうな美少年だ。

「ま、千歳くん可愛いもんね♡アッキーの気持ちも分かるなぁ」

そんなふうに言いながら、ずいっと近づいて私の顔を覗き込んでくる。鼻腔をくすぐる甘いバニラのような香水。急に縮まった距離に、私は驚いて身を引きかける。

と、次の瞬間。

「でもさ……お前、キャラ被せてくんなよな。俺が可愛い系で売ってるの知ってんだろ?空気読めよクソガキ」

──おっと?

完璧なカメラの死角、周囲に聞かれない程度の小声で放たれた言葉。
さっきまで無邪気に煌めいていたその瞳は、いつの間にかブリザード級に冷たくなり、思いきり私を睨みつけている。
あまりの豹変ぶりに、思わず表情が引き攣った。
こ、殺される?

しかし次の瞬間には、再びニコッとアイドルスマイルを浮かべる陽斗。

「じゃ、そんだけだから♡仲良くしよーね、バイバーイ」

何事もなかったかのように手をひらひらと振り、颯爽と去っていった。

取り残された私は、ポカンとして立ち尽くす。

何、このオーディション。
もしかして、曲者しかいない……?