対して静琉は、睦に散々自分の会社を馬鹿にされても、特に気にしていないようだった。
むしろ、面白いことを思いついたとでも言わんばかりに軽く口元を緩ませるという態度。
「……何がおかしい」
「ああ、いや」
苛立ったような睦の口調に、軽く肩をすくめる静琉。
「ちょうどタイミングが良くてな。さっき、その君の言うルシの方が、今俺がプロデュースしている少年たちに会いたいとのことで、ちょうど今開催中のLUCAトレイニー合宿へ招かれたんだ」
「……何が言いたい?」
思いきり眉根を寄せて、警戒心を限界まで引き上げ静琉を睨む睦。
静琉はそんな彼を前に、わざと焦らすように一拍置いたあと──
ニッ、と片口角を上げた。
「提案なんだが──LUCA練習生と、うちの参加者の間で、パフォーマンスバトルをやってみるのはどうだ?」
その提案に、睦は彼の言わんとすることを理解したらしい。
ちょっと息を呑んで黙り込む睦を前に、続ける静琉。
「この環境が、果たして本当に『凡庸』なのか、ルシ率いるLUCAに劣るのか。それを客観的に測ってみよう、ということだ。もしこのバトルでエマが勝ったら──皆戸遥風はここに残せ」
「静琉、しかし──」
「社長命令だ」
ずしり、と。
肩が重くなるかのような錯覚に陥る、有無を言わせぬカリスマ。
その威圧感に当てられてか、流石の睦もグッと押し黙る。
