「睦、お前のことは、最初から微塵も信用していない。特に、あの事件──五年前の栄輔の照明落下事件で不自然な固定不良が見つかり、当時の照明監督がお前の手配だと知ったときからね」
空気が、止まった。
翔と遥風と栄輔の最終審査で──
照明が落下し、栄輔が骨折してデビューが白紙になったという事件。
それにさえ、式町睦は関わっているというのか。
「……それもだったのかよ」
ぽつり、と呆気に取られたようにこぼす遥風。
その声音に滲んでいたのは、怒りというよりも、失望のような。
彼の中で、信じていたかった何かが音を立てて崩れていくのが、伝わってくるようだった。
睦はしばらく俯いていたが、やがて喉奥でくつくつと笑い出した。
「……何の話だかさっぱり」
言いながら、ゆっくりと顔を上げたその瞳には、笑みが浮かんでいた。
不気味なほど、濁りのない瞳。
自分の正義を一片の疑いもなく信じている人間特有の、歪んだ透明さ。
「だが、一つ確実なことは──俺の遥風は、最高傑作は、冨上栄輔なんかと一緒にデビューしていい人材じゃなかった。だから、あれは幸運だったと思うがな」
ダメだ、この人──
本当に狂ってる。
こんな人に、遥風は十八年も抑圧され続けて──
都合のいいように使われ続けて。
そんなのって……きっと、私の経験とは比べ物にならないくらい、最低だ。
