「……っ」
ダメだ、私。絆されるな。
喉元まで出かけた本音を流し込むように、私はぐいっと勢いよくジュースに口をつけた。
そもそも、篤彦の悲劇エピソードだって……どこまでが本当なのか分からない。
同情を買って、口を割らせるための台本。 それくらい、彼なら平然と用意していそうだ。
そもそも、篤彦みたいな用心深い人が信用できない私なんかに自分の過去のすべてを話すはずがない。
このまま彼の口車に乗せられてしまえば、待っているのは私の社会的な死と妹の犠牲。
慌ててそう言い聞かせながら、私は最後までジュースを飲み干して、カップをテーブルに置いた。
──と、その瞬間だった。
ぐら……と視界が揺らいで、頭の奥がずしんと重くなった。
上手く身体が支えられず、反射的に机に肘をつく。
「なっ……」
「あーあー、そんな一気に飲むからや」
近くで言っているはずの篤彦の言葉が、やけに遠くに聞こえた。
頬に熱が集まり、心臓はこれでもかというほどに暴れて、脳内には濃い靄がかかる。
そんな私を、篤彦はいつもの柔らかな微笑を携えて見下ろしている。
「それ実は、酒8:原液2の強烈カクテル」
「……はぁ……?」
こいつ、未成年に酒飲ませやがった……!
さっきからやけに喉が焼ける気がすると思ったらそのせいだったのか。
味は完全にただのオレンジジュースだったから、全く気づけなかった。
「っ……」
身体を支えきれず、思わず机に突っ伏す。
頭がぐわんぐわんと鈍く反響して、喉の奥から抗議の声を出そうとしても、上手く言葉にならない。
身体の芯から、指先にまでじわじわと熱に浸食されていく。
「味、ほとんど変わらんやろ〜。ヤリモクの男が良く使う手法やから、気ぃつけた方がええで?」
酔いで蕩けた思考の外で、ぼんやりと響く篤彦の声。
なんで、そんなこと知ってんの……。
どんどん思考が鈍って、半覚醒状態に陥る私の頭に、ポン、と手が置かれた。
「特に、あんたはさ──」
すっ、と気配が近づいたかと思うと。
そのまま、耳元すれすれの距離で──
「女の子、なんやから」
そんな低い囁きが、落ちた。
