続いてマイクを握る凛也。
「えーと、声質がSランクだなって思いました。歌い始めた瞬間、一気に観客の注意を引くことができる、唯一無二の声質。きっと曲の歌い出しとかにとても向いてるんじゃないでしょうか」
凛也の講評に頷きつつ、口を開く静琉。
「僕もそう思いました。けれど、少しソロ向きの声質かなとも思いましたね。グループでどれほど馴染めるのか……懸念ですが、どう思いますか?睦さん」
静琉の振りに答え、式町睦がゆったりとマイクを持ち上げた。
私は密かに息を呑む。
先ほど、確実に私のことを見ていた彼。彼は一体、私のことをどこまで知っていて、どんなふうに思っているのか。
私は心臓をバクバクと高鳴らせながら、彼の表情を窺うが──
あれ?
彼の表情は意外にも穏やかだった。先ほどまで見え隠れしていた獰猛さはそこには無く、心の底から、柔らかな微笑が浮かぶ。
「彼のようなスパイスがあったほうが、案外良いのではないでしょうか。グループにいても面白そうだと思いましたよ、僕は」
なんだか、拍子抜けした。
先ほど見られていたときは、なんだかうっすら敵意のようなものを感じていたから……酷評されるだろうと思っていたのに。
「このコンセプトがたまたま得意だっただけなのか、カッコいい系のコンセプトでもこなせるタイプなのか。これからが楽しみです」
そう言って、ふわりと柔らかい微笑を向けてくる睦。
何、その態度の変わりよう。
猫被り?それとも……このおじさんも、私のファンになった?
いやいや、あの式町睦がそんなチョロい人間だとは思えない。
どっかの誰かさんとは違うんだから。
どこか胸のざわめきを感じつつ、頭を下げる。
講評が終了し、私は逃げるようにステージを降りた。
なーんか、引っかかるんだよね……式町睦。
あの瞳に見つめられると、どうしようもなく居心地が悪くなるというか。
一応今の様子だと、彼は私に好意的。
けれど──決して気は抜かないで、正体を隠し通さないと。
呼吸を整えながら、私は心の中でそう強く誓ったのだった。
「えーと、声質がSランクだなって思いました。歌い始めた瞬間、一気に観客の注意を引くことができる、唯一無二の声質。きっと曲の歌い出しとかにとても向いてるんじゃないでしょうか」
凛也の講評に頷きつつ、口を開く静琉。
「僕もそう思いました。けれど、少しソロ向きの声質かなとも思いましたね。グループでどれほど馴染めるのか……懸念ですが、どう思いますか?睦さん」
静琉の振りに答え、式町睦がゆったりとマイクを持ち上げた。
私は密かに息を呑む。
先ほど、確実に私のことを見ていた彼。彼は一体、私のことをどこまで知っていて、どんなふうに思っているのか。
私は心臓をバクバクと高鳴らせながら、彼の表情を窺うが──
あれ?
彼の表情は意外にも穏やかだった。先ほどまで見え隠れしていた獰猛さはそこには無く、心の底から、柔らかな微笑が浮かぶ。
「彼のようなスパイスがあったほうが、案外良いのではないでしょうか。グループにいても面白そうだと思いましたよ、僕は」
なんだか、拍子抜けした。
先ほど見られていたときは、なんだかうっすら敵意のようなものを感じていたから……酷評されるだろうと思っていたのに。
「このコンセプトがたまたま得意だっただけなのか、カッコいい系のコンセプトでもこなせるタイプなのか。これからが楽しみです」
そう言って、ふわりと柔らかい微笑を向けてくる睦。
何、その態度の変わりよう。
猫被り?それとも……このおじさんも、私のファンになった?
いやいや、あの式町睦がそんなチョロい人間だとは思えない。
どっかの誰かさんとは違うんだから。
どこか胸のざわめきを感じつつ、頭を下げる。
講評が終了し、私は逃げるようにステージを降りた。
なーんか、引っかかるんだよね……式町睦。
あの瞳に見つめられると、どうしようもなく居心地が悪くなるというか。
一応今の様子だと、彼は私に好意的。
けれど──決して気は抜かないで、正体を隠し通さないと。
呼吸を整えながら、私は心の中でそう強く誓ったのだった。
