ゆったりと柔らかい口調で誤魔化してるけど、要は、『何か隠してんなら潰すぞ』という脅迫だ。
ここから一手でも間違えれば、私は社会的に死ぬことになり、今までの全ての計画が無駄になる。
「どうしてそんな役目を受け入れたの……ですか」
今までの無礼極まりないタメ語口調を、ギリギリで軌道修正して聞く。
そんな私の問いに、すっ、と目を細める篤彦。
……あれ、地雷踏んだかな。
内心ちょっと焦る私に、篤彦は一瞬押し黙った後──
何かを吐き出すようにため息を吐いた。
「いや、まぁ大した理由やないねんけど」と前置きして、ぽつりと話し始める。
「うち片親で、下に弟妹四人おってさ。まだまだ手ぇかかる年やのに、母さん体壊してもて。俺がダンススクールでバイトしたり、イベント出たりでちょこちょこ食い繋いどったんやけど……まぁ、追いつかへんわけですよ」
貼り付けた笑顔、ゆったり落ち着いた声のトーンはそのままで、語られる内容は──あまりに生々しい現実。
長いまつ毛の下、緑がかった黒色の瞳は、暗い水底を覗き込むみたいに澄んでいた。
「進学してまともな職就くのも考えてんけど、うちにそんな余裕はない。進学してる間に家が潰れてまう」
……淡々とした口調が、逆に胸を締め付けた。
働けない片親、四人の小さな弟妹たち。
家賃、学費、食費、そして莫大な治療費──
その全てを、どれだけバイトを頑張ったとて、まだ二十歳の篤彦一人で賄えるはずがない。
高校を卒業してすぐ就職したとしても、高卒じゃ就ける仕事の幅はたかが知れてるし、給料だってきっと、お母さんの治療費を考えると足りない。
「……で、直近で一番稼げる道はって考えたとき、一番いけるかなってのがこれやったって話」
さら、とわざと軽い調子で話す篤彦が、痛々しかった。
──そういう、ことだったのか。
アイドルや芸能界って、『夢』や『憧れ』の象徴だと思ってた。
けど、篤彦にとってはそうじゃない。
お金を稼ぐために一番効果的な『手段』であり『打開策』なんだ。
経済的な理由というのは、ただの憧れで目指す人間よりも、 ずっと切実で、深刻な覚悟を生ませる。
