さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



さあっと血の気が引いて、思わず押し黙ってしまう私。

篤彦は、そんな私を観察するように頬杖をつきながら見つめていたけれど──

やがて、静かに口を開く。


「なぁ、千歳くんてさ、なんで頑なに問題児ぶってんの?」


……ああ。

本題に、入ってきた。


案の定、聞かれると思っていた質問を投げかけられ、警戒心にかちりとスイッチが入る。

ここでは、決して動揺を見せちゃいけない。


「……他人のことばっか気にしてると、足元すくわれるよ」


皮肉ったらしく吐き捨てて、緊張で乾いた喉を潤すように飲み物を口に運んだ。

そんな私に「言うなぁ」と愉快そうに目を細める篤彦。


椎木篤彦の目は、苦手だ。

柔らかい印象を与えて、人を油断させて。

なのに、その奥では、相手の本性を見抜こうと、一挙一動まで見逃さない鋭い光を瞬かせている。


まるで、こちらの仮面がいつ剥がれるかを楽しみに待っているかのような──そんな怖さ。


「まー……よほどのことがない限り、その心配は不要やな」


軽く俯いた篤彦の前髪が、さら、と揺れた。

黒に近い髪なのに、角度によって緑みが混じる不思議な色。


……にしても、どうしてそんなふうに言い切れるんだろう。


内心首を傾げる私に、篤彦は目を伏せたまま、世間話でもするような口調で──



「俺、個人的に受けた事前審査で、もうファイナル進出までは決まってんねん」



衝撃の事実を口にした。



……え?



…………なんて?