さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


……って、今はそんなことはどうでも良い。

問題は目の前の椎木篤彦だ。


この人、一体いつ、外でこれを買ってくる暇があった?

しかもファストフードって、事務所の方針的にあんまり推奨されてないはずじゃ……。

そんな私の疑問を読み取ったかのように、ちょっと肩をすくめる篤彦。


「俺、別に自由に外出できるしご飯も好きにしてええねん。カンナさんの権限で」


えぇ、そんなことある……?

思わず嫌そうに顔をしかめる私に、無言で親指を立ててくる静琉。


……この人、三期では葵のモンペだったけど、今回は篤彦に乗り換えか。

にしても、甘すぎるでしょ……。


呆れ果てる私を、じっ、と見つめてくる篤彦。


「なっ、ほんまにお願い。ぼっち飯寂しいやん?」


うっ、わざとらしい……。

声も顔も激甘で、キュンとせざるを得ないようなお誘いだけれど──

彼のしたたかさを知っている私からしたら、どう考えても何かの罠としか思えなかった。


けれど──


「行ってやれ」


背後のモンペの圧が強すぎて、断れる空気は微塵も無かった。


「……はい……」


結局、消え入りそうな声で返事をしてしまった。


ああ、多分これ、今日詰められるな……。

篤彦とのバトルを想定して組んだ言い訳、脳内でちゃんと復習しておかないと──。


と、そんなことを考えながら、私は深々とため息を落とすのだった。