「それと、栄輔が突き落とされるのも阻止してくれたんだってな。よくやってくれた」
その言葉に、うっと息が詰まる。
……篤彦、言ったのか。
もはや、この二人、私には繋がりを隠す気がないらしい。
バレたなら、逆にそれを圧力として利用しようとする意図だろうか。
「……どっちも偶然ですよ」
目を逸らしてはぐらかしつつ、私はスマホを取り出して時計を確認するふりをした。
「じゃあ、俺はそろそろ行きますね。邪魔してすみませんでした」
できるだけ何も読み取られないように、当たり障りのない笑顔を浮かべて。
そのまま、踵を返そうとしたけれど──
「あ、待って?」
背後に、篤彦のゆるい声がかかって、足を止めざるをえなくなった。
振り返る私に、ポケットに手を突っ込んだままゆったりと歩み寄ってくる篤彦。
……なんか、すごい嫌な予感がする。
思わず内心眉根を寄せる私に、軽い調子で続ける。
「千歳くん、良かったら夜一緒にどう?これ栄輔と食べるつもりやってんけど、あいつ翔んとこ泊まって舞台構成練るらしくて」
ニコッと人の良い笑みと共に掲げられたのは、ファストフードチェーン店の持ち帰り袋。
確かに、今日栄輔たちは部屋にこもって舞台構成練ろうって話してた。彼らが舞台構成組、私と遥風が衣装組として役割分担をしたのだ。
……とはいえ、遥風との関係があんな感じじゃ、こっちは多分順調には行かないだろうけど。
